「なんなら」とは、「相手のために提案をしたり、私が代わりにしましょうか」というように、会話の中で相手の気を遣ったり、提案を柔らかく伝える際に便利な言葉ですが、ビジネスシーンでは誤解を生む可能性があります。特に顧客とのやり取りでは、丁寧で明確な言葉を選ぶことが大切です。 今回は、「なんなら」の意味と、ビジネスシーンでより適切な表現方法について解説します。
「なんなら」の意味
「なんなら」は、便利な言葉で、状況によって、相手に提案したり、条件を示したり、強調したり、様々なニュアンスを伝えることができます。
「なんなら」の意味は以下になります。
1)「もしよろしければ、私が〜しましょうか」という意味合い
相手がのぞんでいることを、推しはかる気持ちを表現する時に使います。「もし必要ならば」という意味合いで、提案をする時に使います。
・なんなら、私がお手伝いしましょうか。(意味は、もしよろしければ、私がお手伝いしましょうか)
2)「相手が希望することを提案する」という意味合い
相手が「〜したい」と思っているかもしれないという気持ちを表すニュアンスです。
相手の希望や状況に合わせた柔軟な提案をするニュアンスが含まれます。相手が求めるものや期待しているものに対して、こちらから代替案を提案する際に使われます。
・そのお店ではなく、なんならこちらのお店にしますか。(意味は、もし嫌ではなければ、こちらのお店にしますか)
「なんなら」は、丁寧な言い回しではないため、ビジネスのシーン、お客様に対して使うことは控えましょう。
丁寧さを求められる場面では、「もしよろしければ」「あるいは」など、より丁寧な表現を使いましょう。
今どきの「なんなら」の使い方
今どきの「なんなら」の使い方をみてみましょう。実際に使われているものです。
例:
・なんなら、コメントくれたらうれしい。
・暑い夏。なんなら、まだまだ暑くなるよね。
・道路に靴下が落ちていた。なんなら、その後どうしたのかな。
・寝坊してしまった、なんなら、今日のバイト休もう。
・私の料理はふつうくらいだと思う。なんなら母の料理がおいしいからだ。
※「なんなら」も若者言葉のひとつです。若者言葉とは若者たちが自分たちの仲間内だけで通じる言葉として使うことが多いフレーズのことをいいます。「なんなら」の曖昧さが、様々なニュアンスを表現し、会話に幅を持たせています。
今どきの「なんなら」には、もっと、それなら、なぜなら、加える意味があり、「なんなら」の持つ意味の曖昧さ(あいまい)がでています。
今どきの「なんなら」は5つの分類にされます。論文「副詞なんならの新用法」にて詳しく分析されています。下記、引用いたしました。
【なんならの分類は5つ】
a 「申し出」 なんなら~しようか/~てもいい/~してやろう
島田泰子「副詞「なんなら」の新用法」(『二松学舎大学論集』61、2018年)
b 「示唆・提案」なんなら~したらどうだ
c 「依頼・注文」なんなら~してくれ(ないか)
d 「妥協点の提示」なんなら~でもいい
e 「願望」なんなら~したい
「なんなら」の言葉の使い方、意味が変わってきているのですね。
そうですね。正しく使いたいですよね。次は「なんなら」を適切に丁寧な言い換えにしてみましょう♡
「なんなら」の言い換え
「なんなら」を適切に言い換えることでビジネスシーンで使うことができますし、「なんなら」の持つ曖昧さ(あいまい)を回避(かいひ)できます。言い換えをみていきましょう。
「なんなら」の言い換え♡
「よろしければ」
❌なんなら私がしましょうか。
言い換えると→よろしければ、私がしましょうか。
「〜させていただいてもよろしいでしょうか」
❌なんなら私が手配しましょうか。
言い換えると→私が手配させていただいてもよろしいでしょうか。
「私が代わって対応します」
❌なんなら私が対応します。
言い換えると→私が代わって対応いたします。
「ご都合がよければ」
❌なんならほかの日にしますか。
言い換えると→ご都合がよければ、ほかの日にしますか。
「それでしたら」
❌なんならほかの日にしますか。
言い換えると→ご都合が悪いのですね、それでしたら、ほかの日にいたしますか。
「もしよかったら」
❌なんならほかの本にしますか。
言い換えると→もし、よかったら、ほかの本にいたしますか。
【ビジネスシーンで使えるなんならの言い換え】
【社内での会話】
その日は出張があって、出席は難しいな。
その日は、ご都合が悪いのですね、もしよろしければ、ほかの日にいたしますか。
調整してくれて、どうもありがとう。助かります。
「なんなら」を使わずに「もしよろしければ」の方がビジネスシーンでは良いですね♡
「よろしければ〜いたしますか」
「私が代わって〜しましょうか」は、基本のかたちです。相手を配慮した言い換えになります。
「なんなら」の言い換えができると良いなと思いました。
「なんなら」の多様性は良いことだと思いますが、ビジネスシーンでは気をつけないと…ですよね♡
「なんなら」の言い換えをすることで、相手に真意が伝えられ「なんなら」の持つ曖昧さ(あいまい)を回避することができます。
「なんなら」を言い換える時のコツ
「なんなら」を言い換える際には、以下の点を意識すると、より適切な表現を選ぶことができます。
状況:ビジネスシーンか、友人との会話かなど、状況によって適切な表現は異なります。
相手:上司、同僚、お客様など、相手との関係性によって、敬語の使い分けが必要です。
伝えたいニュアンス:提案、依頼、確認など、伝えたいニュアンスによって、言葉を選びましょう。
少し難しいかもしれないけど、言い換えてみましょう♡
・提案する場合
「もしよろしければ、私が対応いたします」
「〇〇は、私が対応いたしますので、ご安心ください」
「ご都合がよろしければ、こちらからご連絡差し上げてもよろしいでしょうか」
例:「この件については、なんなら私が担当します。」→「この件につきましては、私が責任を持って担当いたします」
・依頼をする場合
「大変恐縮ですが、ご協力いただけますでしょうか」
「もしよろしければ、ご協力をお願いできますでしょうか」
例:「なんなら、手伝ってくれない?」→「もしよろしければ、この作業に協力していただけますか。」
・確認する場合
「〇〇という理解でよろしいでしょうか」
「もしよろしければ、再度ご確認いただけますでしょうか」
・選択肢を提示する場合
「あるいは、〇〇はいかがですか」
例:「なんなら、別の商品もご検討いただけます」→「他にも、お客様のご要望に合った商品がございますので、ご案内させていただければ幸いです」
・追加の説明、補足する場合
「さらに〇〇はどうですか」
「~でしょうか」「~いただけますか」など、文末表現を変えることで、印象が大きく変わります♡
相手の立場に立って、配慮した言葉を選び、会話の状況や場の雰囲気に合わせて、言葉を選びましょう。
「なんなら」を使うよりも、とてもわかりやすいですし、良い印象ですね♡
まとめ
時間と共に言葉の意味は変わっていきます。しかしながら、「なんなら」の本来の言葉が持つ正しい意味を知らないでいると丁寧語に変換することもできません。正しい意味を知ってシチュエーションにあわせて言い回しを変換させていきましょう。相手の状況に合わせて、自分が代行すること、提案をすることを、適切な表現で伝えられたらとてもいいですよね。