「なんなら、ご飯行かない?」「なんなら、明日でもいいよ」など、日常会話で頻繁に耳にする「なんなら」という言葉。便利な言葉だからこそ、正しい使い方を知っておきたいですよね。本来は相手への配慮を示す丁寧な言葉ですが、近年では別の意味で使われることも。この記事では「なんなら」の意味と使い方、言い換え表現について、具体例を挙げながら解説していきます。
「なんなら」って「それどころか」や「さらに」という意味で主張する言葉としても使われていますよね。
そうですね。「なんなら」の正しい使い方や意味からみていきましょう♡
「なんなら」の意味と正しい使い方
「なんなら」は、本来「もしよろしければ」という意味で、相手の意向を尊重する丁寧な表現です。しかし、近年では「それどころか」や「さらに」といった強調の意味で使われることも増えてきました。
1)「もしよろしければ、私が〜しましょうか」という意味合い
相手がのぞんでいることを、推しはかる気持ちを表現する時に使います。「もし必要ならば」という意味合いで、提案をする時に使います。
・なんなら、私がお手伝いしましょうか。(意味は、もしよろしければ、私がお手伝いしましょうか)
2)「相手が希望することを提案する」という意味合い
相手が「〜したい」と思っているかもしれないという気持ちを表すニュアンスです。
相手の希望や状況に合わせた柔軟な提案をするニュアンスが含まれます。相手が求めるものや期待しているものに対して、こちらから代替案を提案する際に使われます。
・そのお店ではなく、なんならこちらのお店にしますか。(意味は、もし嫌ではなければ、こちらのお店にしますか)
2つの共通したニュアンスは、いずれも相手を配慮した表現です。
【社内での会話】
営業部が忙しいみたいで、誰も内線とらないんだ。
なんなら(よろしければ)、私が直接営業部まで行ってきます。
そうか、どうもありがとう。助かるよ。
親しい人上司との間で「なんなら」が適切に使えていますね♡
「なんなら」は、より良い提案をする場合や、選択肢を広げる場合に使う言葉です。親しい人ではない場合は、「よろしければ」や「代わりに」など、より適切な言葉を選ぶ方が良いでしょう。
若者の「なんなら」使い方
若者の「なんなら」の使い方についてみていきましょう。若者言葉と言われていますね。「なんなら」は5つの分類にされます。論文「副詞なんならの新用法」にて詳しく分析されています。下記、引用いたしました。
【なんならの分類は5つ】
a 「申し出」 なんなら~しようか/~てもいい/~してやろう
島田泰子「副詞「なんなら」の新用法」(『二松学舎大学論集』61、2018年)
b 「示唆・提案」なんなら~したらどうだ
c 「依頼・注文」なんなら~してくれ(ないか)
d 「妥協点の提示」なんなら~でもいい
e 「願望」なんなら~したい
5つに分類されています。実際に使われている「なんなら」の例文をみながら、a〜eのどれが使われているのかみていきましょう。融合パターンが多いです。
1)あの映画、なんなら2回目も観に行くよ。
b「示唆・提案」
e「願望」が含まれています。
相手に「2回目も観に行く」ことを提案する意味合いと、自分が「2回目も観たい」という願望の両方の意味合いが含まれています。
2)なんなら、お茶でも淹れましょうか。
a「申し出」
e「願望」が含まれています。
相手に「お茶を淹れてあげたい」という気持ちを込めている表現とお茶を淹れることを提案する表現の意味合いが含まれています。
3)なんなら、この仕事、一緒にやろう。
c「依頼・注文」
e「願望」が含まれています。
一見シンプルな依頼ですが、「依頼・注文」だけでなく、「願望」や「相手への配慮」「協調性」「親近感」など、様々な感情やニュアンスが込められています。
「なんなら」の融合パターンが多い理由について
「あなたの意見も大切だけど、もしよければ私の意見も聞いてほしいな」という気持ちを持っていることが多いです。だから、状況に合わせて「なんなら」という言葉の意味が少しずつ変わってきます。
相手がどのような意味で使っているのかを判断するためには、文脈や関係性などを考えるようにしましょう。
相手の気持ちに配慮する心がけは、とても大切なことですよね♡
今どきの「なんなら」使い方
現代の若者言葉において、「なんなら」は、従来の「もしよろしければ」「もし差し支えなければ」という意味に加えて、「強調」の意味を込めて使われることがよくあります。
5つの分類のほか「なんなら」を強調の意味で使う人もいます。
「なんなら、〇〇ですらできるよ」:〇〇という、一見難しそうだったり、極端なことをしてもできるという自信や余裕を強調し、アピールする際に使われます。
「なんなら、〇〇した方が楽しいよ」:〇〇という選択肢の方がより面白い、楽しい、といったことを強く主張し、相手に自分の意見を押し出す際に使われます。
これらの例では、いずれも「なんなら」が強調の意味を込めて使われており、相手の注意を引いたり、自分の主張を強調する表現として使われています。
「なんなら」の言葉の使い方、意味が多様化しているのですね。
そうですね。相手がどのような意図で使っているか考えて使いましょう。
「なんなら」みんなが使っているし、なんとなく丁寧ではないと感じていました。ビジネスシーンでは使わない方がいいでしょうか?
「なんなら」の本来の意味は相手を配慮した表現です。正しく使い方であってもフランクな感じになるため、言い換えた方がいいと思います♡
結論からいうと、ビジネスシーンでは、基本的には避けた方がよいでしょう。ここで別の使い方を勉強しましょう。
「なんなら」の言い換えと例文
「なんなら」の意味から言い換えを考えてみましょう。正しく言い換えることでビジネスシーンでも使うことができ、丁寧な印象になります。また「なんなら」の持つ曖昧さ(あいまい)を回避することができます。
「なんなら」の本来の意味は「もしよろしければ」「もし差し支えなければ」です。
【なんならの言い換え・類語】
・それでしたら
・ご希望であれば
・もしよろしければ
・ご都合がよろしければ
・私が代わって対応いたします
・〜させていただいてもよろしいでしょうか などがあります。
いずれも「なんなら」と同じ意味を持ちながら、より丁寧な表現です。
さきほどの「なんなら」の例文を実際に言い換えてみましょう。
言い換えてみましょう♡
1)あの映画、なんなら2回目も観に行くよ。
・あの映画、ご一緒にもう一度観に行きましょうか?
・あの映画、もう一度観たいです。もし都合が合えば、一緒にどうですか?
2)なんなら、お茶でも淹れましょうか。
・お茶でもいかがでしょうか。
・もし、よろしければお茶をご用意しましょうか
3)なんなら、この仕事、一緒にやろう。
・もし、よろしければこの仕事、一緒にやってみませんか。
・恐れ入りますが、この仕事にご協力いただければ幸いです。
「なんなら」を使わない場合、まわりくどいフレーズになりますが、曖昧さを回避できていますね。「なんなら」を使うと伝えたいことが省略されてしまうのですね。
相手との関係性やシチュエーションにあわせ、相手を配慮した言い換えができたらいいですね。
「なんなら」言い換えをするメリット
「なんなら」を言い換えすることのメリットです。
・言葉の表現の幅が広がる。
・相手に好感を持ってもらえる。
・相手の関係性や状況に応じた表現をすることができます。
・相手に伝えたいニュアンスをより明確に伝えることができます。
まとめ
ビジネスシーンでも親しい人ならば、「なんなら」を使っても問題ない場合もあります。そのような場合以外は、ビジネスシーンでは、より丁寧な表現を使うようにしましょう。本来の言葉の意味を理解していないと、丁寧語に変換しても、相手に誤解を与えてしまう可能性があります。そのため、シチュエーションに合わせて相手に伝わりやすい言い回しを使い分けるためにも、言葉の意味をしっかりと理解しておくことが重要です。